アスペルガーの特性がわかりやすい人でもなかなか診断が出ないことがあります。
それはなぜでしょうか。三つの理由をご紹介します。
まず、本人が意識しなければ、当然、診断されません。本人が困っていない場合、病院に行こうとしません。でも、特性が目立つのに、本人がどうして困っていないでしょうか。だいたい、困っていない人こそ、周りの人を困らせます。特に立場が高い人こそ、注意する人がいません。上司のこだわりが強くても部下が注意できないでしょう。けれども、部下は強いストレスを感じるのです。上司の評判は悪くなり、部下が辞めることもあります。こだわりが強い人こそ、ぜひ診断を求めてほしいです。本人のためだけではなく、周りの人のためでもあります。
そして、通っているクリニックが発達障害について理解がない場合、もちろん、正しく診断ができません。発達障害は日本ではかなり最近まであまり知られていませんでした。現在でも意外と知らない医者が多いです。もちろん、「アスペルガー症候群」というものを聞いたことがあります。でも、「発達障害を持っている人なら、自ら病院に行かないであろう」と思う医者がいます。アスペルガー症候群なら話がまったくできないと思う医者もいます。だから、こだわりが強くて、社会性が弱い人がクリニックに訪ねても、医者が理解者ではない場合、誤診されます。たとえば、こだわりと「妄想」を間違えます。コミュニケーションの障害のために会話がうまくできない人なら、「うつ病」と誤診される場合があります。アスペルガーを持っている人なら、同じ話の内容を繰り返すことが多いです。もし医者がそれを知らない場合、「精神病」の症状と間違えます。誤診された人なら、根本的な治療が始まらないので、なかなか状態が変わりません。今まで、以前誤診されてからやっとアスペルガーと診断された知り合いが何人もいます。決して珍しいことではありません。
最後に、性格の問題と思われている場合、診断されません。未診断の人なら、自分のことについて以下のようによく考えがちです。
ダメな人
頭が悪い
冷たい人
自分勝手
できることが何もない
頑張らない人
わがまま
などなど
わがままな性格が原因と思うなら、病院になかなか行かない気がします。性格の問題と勘違いしているなら、自分のせいにします。どんなに頑張っても自分が悪いと思い込みます。もちろん、自己責任を持つべきです。けれども、性格の問題と考えるかぎり、本当の理由を知ることができません。
さて、アスペルガーの診断がなくても本人が意識すればよいでしょうか。はい、意識すればよいと思います。十分、家族などから支援があれば、わざわざ診断がなくてもいいです。ただ、診断があってもなくても自己理解は不可欠です。自分の特性を理解して、得意なことと不得意なことをしっかり把握するべきです。一般的な社会的マナーも学ぶほうがよいでしょう。診断がなくてもいいですが、本人がまったく意識しない場合、周りの人を困らせるでしょう。